Laser

事業目的

情報・通信・医療分野等で注目されている素材形成や超微細加工のためにレーザーを応用した加工技術が注目されています。MSTCでは、ファイバーレーザーや半導体レーザー等について開発課題を明確化する調査研究を行いました。

現在は、次世代のレーザーとそれを利用した加工技術に関して、技術研究組合次世代レーザー加工技術研究所(ALPROT, Advanced Laser and Process Technology Research Association)に協力しています。

活動実績

平成21年度 省エネルギー革新技術開発事業/挑戦研究(事前研究)/革新的材料(CFRP)加工技術の事前研究

日本の素材開発の最先端であり、環境面(軽量化等)から製品製造への適用が見込まれるCFRP等の複合材料は、高精度・高品位な切断、接合技術はまだまだ研究室レベルで、産業実用化まで到達できていません。また今後産業展開を考慮する上で技術の高度化は必須であり、現在使用されている接触加工やウォータージェット加工も様々な課題があります。そのため、今回非接触加工であるレーザー加工技術に関しての加工実現を調査しました。

具体的には現状レーザー加工技術で、最先端素材(CFRP)の加工が可能かどうかを実験し、現状の技術の壁(性能限界、適用限界)を明確化することで、真に必要かつ実現可能性の高い挑戦的な技術開発目標の設定を行いました。その結果、レーザー加工として、(1)新素材としての剛性を高めたチャンピオン素材(クロス材等)に関しては、加工は困難、CFRPの利点を失わない、加工しやすい素材への転換が必要、(2)汎用素材として開発が進んでいるCFRP素材は条件が整えればレーザー加工の有効性はかなり期待できる、(3)レーザー加工に関しても、単なる高出力より多波長の繰り返しによるある程度の出力(高出力)が得られれば十分産業としての活用が可能、(4)今後より精緻な分析を行い、品質確保とコスト等の観点での検討が重要、という結論に至りました。

また本研究結果は、平成22年度より開始された「高出力多波長複合レーザー加工基盤技術開発プロジェクト」の基礎データとして活用されました。

省エネルギー革新技術開発事業/挑戦研究(事前研究)/
革新的材料(CFRP)加工技術の事前研究成果報告書

委託元: (独)新エネルギー・産業技術総合開発機構
※大阪大学、産業技術総合研究所、レーザー総研との共同調査研究

平成20年度 産業用次世代レーザー応用・開発に関する調査研究

日本の製造業が優位性を維持強化していくために不可欠なレーザー加工技術は、産業界からの強い要望があるにもかかわらず、金属ポリマーやポリマー間の接合、局所部材表面改質等の十分な対策をしていません。また生物化学系物への展開も不十分です。このためレーザーの高品質・高出力化と加工方法・加工部材革新などを総合的に検討し、レーザー加工関連技術に対する技術課題とその解決方法ならびにその波及効果について精査することを目的として調査研究を行いました。

この調査では、波長可変・高出力半導体レーザー及びそれを利用した加工・表面改質・化学反応制御等の応用技術は、自動車、電子機器、化学製品等幅広い分野においてものづくりを革新し、より高付加価値でしかも環境負荷がきわめて少ない製造プロセスを可能にすることが分かりました。

今後のわが国における製造業の高度化と製品や製造プロセスの環境負荷低減に向けた取り組みとして、次の技術開発項目について産・学・官協力による研究開発を実施するべきとの提言を行いました。

  • ・複合材料や異種材料など熱的・光学的物性が異なる材料を一体化させた部材のレーザーによる接合、切断技術
  • ・レーザーを用いた、太陽電池や薄膜内部の結晶制御(レーザーアニーリング)、部材表面の大気中でのドライ洗浄(レーザークリーニング)、部材表面の改質による対摩耗、耐熱、耐食性能の向上
  • ・レーザーの持つ光エネルギーの単波長性、指向性、パルス性を活かした光化学合成技術、高分子材料の表面化学修飾技術、医療・バイオへの利用技術
  • ・上記技術の実現と産業としての確立に不可欠なレーザー発振システム、特に高出力で紫外域においても波長可変な半導体レーザー発振システム及びその利用に適した光学系(集光光学系や波長変換など)技術
産業用次世代レーザー応用・開発に関する調査研究報告書(要旨)

委託元: (財)機械システム振興協会
この事業は、競輪の補助金を受けて実施したものです。

平成19年度 高品質化した加工用レーザーと開拓される新加工領域に関する調査研究

ものづくりを支える加工、組立、検査等のコア技術のツール(切削、研削等)として重要な要素となるレーザーは、その特徴を活かして様々なレーザーの開発が進められてきました。また昨今、扱いやすく、高品質化が可能なレーザーとして、ファイバーレーザーが注目され、かなりのレーザー技術がファイバーレーザーに置き換わることも明確になってきています。MSTCでは、日本オリジナルの次世代レーザーを開発するために調査研究を行いました。

レーザー加工は今後一層の発展が期待されますが、現状では欧州特にドイツが加工用レーザー装置の市場を寡占しています。本調査においては、今後主流になると考えられるファイバーレーザー技術及びファイバーレーザーを利用した加工技術についての現状及び将来動向を明らかにし、それらを活用した次世代ファイバーレーザー及び新加工技術の開発提案を行いました。

・国内外レーザー技術動向調査
国内外で動向調査を実施しました。欧州では各国でレーザー開発を推進し、それら成果を利用して産業への応用展開がされているため、開発の共有化によるコスト削減、技術革新が行われていました。日本の得意とする技術が多数有り、国際競争力を生む技術的ベースがあることが分かりました。 レーザー技術の体系化及び将来動向分析(レーザー技術のロードマップ) レーザー加工関連技術の技術分類を行い、課題の抽出を行いました。また開発時期等時間軸や日本のレーザー加工装置の戦略として重点技術内容を明確にしました。さらにレーザー加工技術開発を必要とする時期や内容、社会的な背景等を明らかにする導入シナリオを作成し、既存ロードマップとの比較をしました。
・ファイバーレーザー技術と既存加工用レーザー技術の比較
レーザー加工を導入している企業の加工技術やコスト構造を調査し、レーザー加工を取り入れられない場合はその理由を分析しました。またファイバーレーザーの優位性やその他レーザーの技術動向について調査しました。
・次世代ファイバーレーザーにより開拓される新加工領域・アプリケーション
新たな高集光・高出力ファイバー加工用レーザーを利用した加工法や製品・産業等を分析した結果、溶接に代表される加工プロセスの高速・高度化、微細接合に代表される微細加工プロセスの高速・高度化をすれば、新素材が創製される可能性があることが分かりました。
・次世代ファイバーレーザー及び次世代ファイバーレーザーによる新加工領域(製造技術)の技術開発提案
これまでの調査結果に基づき、レーザーを使用すれば優位性を見いだせる製造分野や製品の絞り込みをしました。さらに次世代ファイバーレーザー加工に適合するための必要な性能と解決すべき課題や提案すべきシステム構成等の概略案を作成しました。
高品質化した加工用レーザーと開拓される新加工領域に関する調査研究報告書(要旨)

委託元: (財)機械システム振興協会
この事業は、競輪の補助金を受けて実施したものです。